こんにちは
院長の櫻井です
本日の外来症例より、久しぶりの診断クイズです。
症例:10歳、男子
現症:前頭部に自覚症状を伴わない粃糠様落屑局面が存在。最近抜け毛を自覚。
既往歴:アトピー性皮膚炎
生活歴:レスリングを習っている
さて診断は?
A. トリコフィトン・トンスランス感染症
レスリングというキーワードが今回の診断の決め手です。
皮膚科専門医の中では常識となっていますが、格闘技選手間で、トリコフィトン・トンスランスという白癬菌
の感染症が非常に流行しており、頭部に生じた場合、フケ症や脱毛巣として発症します。
今回の症例では、頭部の落屑の真菌顕微鏡検査にて真菌要素を認めたため、容易に診断に至りました
が、落屑・毛髪の顕微鏡検査陰性でも保菌者のこともあり、その場合、頭をブラシして、そのブラシを
寒天培地に刺して真菌培養をする方法により診断をします。(以前当院で経験した症例では、頭皮よりの
顕微鏡検査は陰性で、真菌培養により確定診断に至ったケースがあります。)
治療は、テルビナフィン内服+コラージュフルフルシャンプー使用としました。
今回のケースではアトピー性皮膚炎も合併していたため、アトピー性皮膚炎による頭皮湿疹を鑑別する
必要がありましたが、顕微鏡検査にて容易に鑑別できました。(ちなみにWood灯検査は陰性でした。)
が、レスリング、というキーワードがなかった場合、果たして簡単に診断できたか、難しいところです。
やはり、落屑を見たら常に真菌症の可能性を念頭に置き、地道に鑑別検査を行うべき、というのが
結論でしょう。