本日の症例より。

80代、女性。

幼少時に右足に大やけどを負い、右足趾は第5趾以外は切断し、右足の土踏まずから内顆にかけて

厚い肥厚性瘢痕を形成している。同部に1年前より潰瘍が出現し、自己処置を行っていたが、徐々に

拡大してきたため本日当院初診。足背動脈・後脛骨動脈は触知可能。周囲に接触皮膚炎を思わせる

紅斑や痒みは伴わない。

肥厚性瘢痕部の表皮は薄く、潰瘍化しやすいので、ただの皮膚潰瘍として治療していきやすい

のですが、ここで、ひとつだけ、絶対に見落としてはならない鑑別疾患があります。

その鑑別疾患とは?

A.熱傷瘢痕癌

熱傷瘢痕癌とは、熱傷瘢痕を形成して数十年経過してから発生する有棘細胞癌です。

表皮が菲薄化しているため深くに浸潤して転移しやすいのを特徴とします。

熱傷瘢痕に限らず、褥瘡などにおいても、長期間経過する難治性の潰瘍を見た際には、

必ず有棘細胞癌は念頭に置いておかなければなりません。

本症例については、1年という長い経過も考えて、後日、生検予定を組みました。(もちろん、

これで何もない確率が高いのですが、fatalになる鑑別疾患だけは真っ先に除外する必要が

あります。)