今日は、非常に興味深い症例のお話。
症例:50代、男性
現病歴:約2年前に、特に誘引なく、全身のすべての毛(頭髪だけでなく、眉毛・睫毛・髭・体毛も含む)
が抜けたが病院を受診することなく放置。最近になり、気になってきたため当院を初診した。
既往歴:弁膜症術後でワーファリン服用中
診断は容易で、汎発型円形脱毛症ですが、さあ、治療をどうすべきか非常に悩みました。
2年来の汎発型円形脱毛症・・・、どう考えても非常に難治です。
内服ステロイド?→陳旧例なので果たして治療効果はどうか・・・?また、内服ステロイドの場合、
それで発毛が見られたとしても、減量時に再度抜けることが予測されるため、
全身的な合併症も考えると使いづらい。ましてやワーファリン内服中に対して、
血栓傾向を促進してしまうリスクもある。
SADBE?→局所免疫療法は、局所的に接触皮膚炎を起こさせることで、外用薬(SADBE)の非外用
部位にも免疫応答を惹起させ、発毛を図る方法です。ガイドライン的にはこれが推奨
されるのですが、汎発型に対しては、果たしてどのくらいの期間でどの程度の効果が
あるのか・・・?
あきらめる?→これもある意味ありの選択肢ですが、治療を希望されている以上は、最初から
これはないですね。
散々逡巡して、まず、全身型ナローバンドUVB療法で開始することとしました。
その理由→光線療法は、円形脱毛症に対して効果的である。なおかつ、全身照射型であれば、
全身の照射が短時間で可能であり、なおかつ、様々なサイトカインの発現を広範囲に
惹起せしめる結果、効果が期待できるのではないか?しかも、全身性の合併症を
伴わず、ほぼゼロリスクといえる。
ということで、週2回程度で開始したところ・・・
生えてきました!
7回照射したあたりから産毛が生え始め、現在は20回以上の照射を重ね、2.0Jまで増量して
いますが、黒々とした眉毛が生え揃い、頭部にも白い産毛に混じって黒い毛も生え始めています。
しかも、ゴーグルをしていて照射されていない、睫毛も生えてきています。
もちろん、あくまでこのケースにおいて有効であったというだけで、全ての汎発型円形脱毛症
に対して有効というわけではありませんが、汎発型円形脱毛症に対しての全身照射型ナローバンド
UVB療法は、ひとつの選択肢となりうることが実感できた、意義深いケースです。