こんにちは
院長の櫻井です
皮膚科を長くやってますと、誤診しやすい疾患についても知識が増えてきます。
今日はその一つのお話。
粉瘤と皮膚線維腫、これらはともに非常に多い皮膚腫瘍なんですが、ちょっと区別がつきにくい
ケースが時々あります。なぜこういったお話をするかというと、以前、皮膚科クリニックで手術の
バイトをしていたことがあるんですが、粉瘤という診断で手術予約が入っていたケースで、実は
皮膚線維腫であった、というものをしばしば経験したことがあるんです。
病理組織学的には全く似ても似つかない疾患なんですが、ごく小さい粉瘤の場合、皮膚線維腫と
臨床的に似てしまうことがあるんですね。
どのように鑑別するか?
まず理学的所見として、皮膚線維腫には、dimpling signといって、周辺皮膚をつまむと、腫瘍が
陥凹する、という所見があります。粉瘤の場合、典型的には、皮表および下床との可動性が良好
ではあるのですが、小さい場合には可動性がはっきりしない場合があり、その際にはこのdimpling
signが手がかりとなります。
ダーモスコピーでは、皮膚線維腫ではdelicate pigment network,central white patchがみられるの
も特徴ですが、粉瘤が炎症を繰り返して色素沈着および線維化を伴っていれば、似たダーモスコピー
所見となり得ると考えられます。
私は、やはり最も鑑別に有用なのは、エコーだと思います。エコーでは、皮膚線維腫は、真皮内の
low echoic lesionであり、粉瘤は、真皮~皮下組織にかけての嚢胞性病変であり、側方陰影の存在、
後方陰影の増強から容易に鑑別ができます。
粉瘤と皮膚線維腫ですと、切開線の長さが変わってきますから、この鑑別は大切です。