今日は研修医向けの易しい問題。

症例:80代、女性

現病歴:初診の1か月前のハンドソープを変えたあたりから両手背に紅斑が出現してきたため

当院初診。初診医は接触皮膚炎を疑いvery strong classのステロイド外用剤を処方したものの

著変なく、再診。

現症:写真に示すように、両手背に、軽度の掻痒のある、中心がやや萎縮した境界明瞭な大豆大

までの紫紅色斑が多発。

さて診断は?

A.扁平苔癬(Lichen planus)

一見して、扁平苔癬を疑わせる臨床像であり、ステロイド外用に反応不良であることも、それを

示唆する所見です。

まずダーモスコピーで観察すると、葉脈状の白色線条がみられ、これはWickham線条に合致する

所見と考えました。

口腔内を観察すると、歯科金属が多数あり、頬粘膜に少しもやもやした白色調の部分があるが、

扁平苔癬の口腔内病変としていいかどうか判断は難しいところでした。

問診すると、

・内服薬などはなし

・肝炎の既往なし

・カメラの趣味なし

とのことでした。

手背より皮膚生検を実施し、やはり病理組織学的に扁平苔癬と確定診断に至りました。

血液検査上、ウイルス性肝炎は否定でき、金属パッチテストの予定を組みました。

扁平苔癬は皮膚科学的には有名な疾患ですが、頻度はそう多くはなく、しかし特徴的な色調から

診断は決して難しくはありません。最終的には病理組織学的診断が必要となりますが、

個人的な経験で言うと、ダーモスコピー所見が非常に有用だと思います。

治療は、まず原因検索が重要ですが、原因が特定できないケースも多く、その場合、なかなか

治療抵抗性であることも経験します。自験例ですが、背部一面に多発する扁平苔癬に対して

narrow-band UVB療法が著効したケースがあり、光線療法も有用な選択肢であると考えます。