これは一瞬だけ考え込んでしまった症例。

症例:7歳、男児

現病歴:本日夕方、お風呂に入ろうしたら殿部に発疹が多発しているのに気づき、急いで受診。

ご両親によれば、殿部以外には何もない、とのこと。

現症:殿部両側に半米粒大までの紅色丘疹が多発し、肛門周囲にも顕著に見られる。

よくよく見てみると、水疱を形成するものがいくつか見られる。痛みや痒みなどはない。

さて診断は?

A.手足口病

手足口病は手、足に水疱、口腔内ではアフタが多発しますが、それ以外にも、

肘頭・膝蓋・殿部にも皮疹が出現します。また、2011年に大流行したコクサッキーウイルスA6型

による手足口病では、むしろ水痘様に全身に小水疱が多発する非典型的な分布をとること

も知られ、日本臨床皮膚科医会の報告によると今年の手足口病にも約25%程度見られるようです。

このケースにおいても、よもや、と思い、手足を見たところ紅斑・小水疱が少数ですが出現

しており、肘頭・膝蓋を見ると、やはり同様の皮疹がわずかに見られました。殿部以外の皮疹は、

診察時にこちらから指摘して、ご両親は初めて気づかれました。

手足口病はその名の如く、通常は手・足・口腔内の病変を主訴に受診するので、診断に困ること

はないのですが、今回のように、それ以外の部位のみを主訴に受診した場合は少し考え込んで

しまうこともあります。

実際、私も、汗疹・汗腺炎・毛嚢炎・水疱性伝染性膿痂疹などが最初は頭の中に浮かびましたが、

それぞれ鑑別して否定し、結果、手足口病を疑い、体の他の部位を見ることとして、確定診断に

至りました。

振り返ってみると典型例ですが、非典型的な主訴で受診してきた場合は、典型例でも診断に

時間がかかる場合もある、という教訓でした。

ついでに蛇足ですが・・・

それでは、水痘様の分布をとる非典型的手足口病と、水痘の鑑別方法は?

A.ギムザ染色

これはこれまでの皮膚科ブログをお読みの方々には簡単すぎましたね。