本日の症例より。

症例:80代、女性

現病歴:1ヶ月前に背中の「黒いできもの」を外科で切除したところ、結果が皮膚がんであったが、

詳しい説明がなく、様子を見ましょうということであったため、紹介状なしで本日当院初診。

現症:左腰部に線状の手術瘢痕がある。肉眼的に腫瘍の残存らしき病変は見当たらない。

さあ、困りました。

「皮膚がん」と一口に言ってもたくさんあります。

背中で、色が黒かったことからは、

悪性黒色腫

基底細胞癌

pigmented Bowen’s disease

pigmented eccrine porocarcinoma

あたりが鑑別か・・・

でも悪性黒色腫であれば、さすがに皮膚科に疎い外科の先生でも、様子見ということには

ならないだろうから、残り3個のどれかか・・・

基底細胞癌とBowenであれば、病理で断端陰性であれば経過観察ということになるよな・・・

と考えましたが、いずれにしても詳しい情報がないと何とも言えません。

ということで、前医に、術前写真・術式(マージンの距離)・病理組織および病理診断書の

情報提供をお願いしたところ、Bowen病で側方断端陽性(つまり、取り残しがある)でした。

当院での再手術を予約しました。

皮膚のできもの(皮膚腫瘍)は簡単に取れそうなので、術前にきちんと診断されずに

皮膚科以外の科で手術されてしまうことも多いです。しかし、このように悪性腫瘍が一定の確率で

混じっていることを肝に銘じなければなりません。

今回は病理組織があったからよかったものの、皮膚がんが美容外科なんかでほくろとしてレーザー

などで焼かれてしまって、後々再発して皮膚科に受診してくるケースもあります。

やはり餅は餅屋です。

皮膚のできものは、やはり皮膚科専門医の正しい診断を受けてから手術するのが

最も安全と言えます。