今日は若手の先生向きのおはなし。

先日のブログの、髄膜瘤やエリテマトーデスなどのような疾患を診断していると、

「よくこの診断がつきましたね」とか、「何でこの病気を考えつくことができたんですか」と、

質問を受けることがあります。

私的には、「そう思ったから」とか、「これを鑑別しないといけないと考えたから」としか、

言えないのですが、それでは説明になりませんので、難しい疾患を診断できるに至るまでの

プロセスを考えてみました。

やはり、まずは、その疾患を知っていないことには話になりません。そのためには、多数の疾患を

経験することは当然ですが、人の経験には限りがありますので、経験できないものについては、

本を読むしかありません。すなわち、豊富な臨床経験を積むことのみならず、積極的な座学による

アプローチが大切になります、また、指導医・上級医が身近にいる立場であれば、その場ですぐに

判断を仰ぐこと。このフィードバックに勝る学習方法はありません。

また、common diseaseの典型例及び非典型例を徹底的に経験すること。それにより、そこに含まれない

疾患が目の前に現れた時に、おかしいな、と考えつくことができます。

そして、検査法に精通すること・検査を怠らないこと。皮膚科医はどうも視診のみに頼って検査を

怠るきらいがあります。例えば、診断のつかない腫瘍を診察する際にも、エコーはその場ですぐ

できますし、MRIやCTもオーダーできますから、わからないからいきなり生検、とはいかずとも、

ある程度までの診断は非侵襲的にできます。また、特に炎症性疾患においては、鑑別に迷った際の、

あるいは確定診断をつけるための、積極的な生検が必要であるのは論を俟たないでしょう。

先日の髄膜瘤、実は、この疾患、私はそれまで一度も見たことがありませんでした。

でもその場で、まず髄膜瘤の疑いが濃厚と診断しました。

なぜ診断できたのか?

・座学により、正中部の病変については髄膜瘤を鑑別に入れることを知っており、臨床像について

の知識は身につけていた。

・鑑別診断(先天性皮膚欠損症や円形脱毛症など)を列挙することができ、各疾患について

経験があり、鑑別点を挙げることができた。

・CT検査を実施し得た。

この3点により、座学でしか経験(?)のない疾患についても診断し得たわけです。

逆に言えば、臨床医にとって、知らないから診断できなかった、というのは恥ずかしく思わないと

いけない、ということになります。

経験には限りがありますが、座学は自身の心がけ次第でいかようにもできます。

臨床医にとって座学は仕事の一環であることを常に意識しなければなりません。