今日は、気の毒な症例のお話です。

症例:10代、女児

現病歴:当院初診の前日にお湯を右大腿部にこぼし、急いで皮膚科当直がいる病院の救急外来を

受診。右大腿部に手掌大の大きい水疱形成をしており、その時点で水疱蓋をすべて切除し、

アズノール軟膏+メロリンガーゼ処置をされた。以降の消毒目的に当院初診。

いや、初診時に水疱蓋全部取っちゃダメでしょ!

この患者さんは、結果、当院初診時には右大腿部に手掌サイズの大きなびらんを形成してしまって

いて、当院ではゲンタシン軟膏+モイスキンパッドとしていますが、くっつきにくいモイスキンパッドで

さえも剥がす時に激痛が起きてしまっています。

水疱蓋を何日残すかは諸説があるところですが、一般的には初期は水疱内容を吸引するか、水疱蓋に

小切開を加えるにとどめます。水疱蓋を温存し、下床と接着させておくことで、下床の上皮化がはかられ

るからです。しかしあまり温存しすぎるとその隙間に細菌感染を併発しうるため、数日したら水疱蓋を

除去した方がいい、とされています。(掌蹠のように皮膚が分厚い部分の小水疱は割らずに吸収を

待つこともあります。)この「数日」が何日なのかは各医師によっても流儀が異なるし、あるいは症状に

よっても変動しますが、初日に全部取ってしまうということは通常はあってはならないと思います。

ですから、この患者さんも、本来は救急外来では水疱蓋を割るだけとして、数日経過後にある程度

dryになり始めてから水疱蓋を除去すべきでした。

また、創傷被覆剤治療礼賛の医師や一般の方が、やけどに限らずすべての外傷において初日から

wet dressingをして悪化するのをよく見かけますが、ごく小さい創傷以外の受傷後超急性期はdryとし、

その後からwet dressingとする方が、いい経過を辿ります。