こんにちは晴れ

院長の櫻井ですニコニコ

今日は皮膚科研修医向けのお話。

外来をやっていますと、大した症状ではなく生検(組織検査)までは必要ないけれど、

じゃあ診断は何なのか、という疾患によくでくわします。(腫瘍性疾患で診断がつかなければ

生検が必要となることが多いですから、ここでは他の、炎症性疾患や感染性疾患を想定

しておきます。)

そういった時に、いきあたりばったりで薬を出して診断的治療をしていいものでしょうか?

僕はまずダーモスコピーで皮疹をよく観察します。

本日の症例から。

症例:8歳、女児

現病歴:数日前から四肢に孤立性の掻痒を伴う2mm大の常色小丘疹が多発してきたため

本日当院初診。全身状態は極めて良好。

非常勤医師が初診し、私にコンサルトされました。

視診から、いくつかの鑑別診断が挙げられます。

ざっと、虫刺症、伝染性軟属腫、水痘、光沢苔癬、扁平疣贅などでしょうか。

水疱や漿液性丘疹もなく皮疹は一様でしたので、水痘は否定していいですね。

では、他の疾患はマクロの視診で区別がつくか?

なかなか難しいですね。

こういう時に、ダーモスコピーを利用します。何もダーモスコピーは腫瘍性疾患に使用を

限定する必要はなく、炎症性疾患や感染性疾患にも使用できます。

で、ミクロの目であるダーモスコピーを使用してみました。

すると、

・複数の個疹で小痂皮が付着

・全体として白色調であり毛細血管拡張を伴う

・疣状変化や点状小血管は存在しない

・中央の陥凹性変化および丘疹を取り囲むような血管所見は存在しない

という所見が得られました。

3番目から扁平疣贅を、4番目から伝染性軟属腫を否定しました。

2番の所見の白色調変化は、角化ないしは線維化を反映する所見であり、1番の

痂皮が固着する所見を合わせると、掻爬による変化に矛盾しないと考えました。

光沢苔癬ではその病理組織像を考えれば、白色調変化は見られても毛細血管拡張

や痂皮は伴いませんから、acuteな発症もあわせて、虫刺症と診断しました。

つまり、ここで診断に至るためのストーリとしては、

・マクロで鑑別診断を列挙する

・その鑑別診断の病理組織像からダーモスコピー像を想起する

・皮疹のダーモスコピー像を照らし合わせる

という3つのプロセスを経ています。

特に、最もキモとなるのが、病理組織像からダーモスコピー像を想起する、という

所です。各疾患の病理組織像が頭に入っていることが大前提であり、どのような

組織学的変化がどのようなダーモスコピー像に反映されるのかも知っていること

がまた前提でもあるわけです。

ここを縦横無尽にできるようになると、診断能力が飛躍的に進歩します。