今日も教科書的典型例から。
症例:30代、男性
現病歴:初診の3週間前から四肢を主体に痒みのある紅斑が出没を繰り返す
ため、10/12当院初診。
現症:写真に示す。四肢に掻痒を伴う浮腫性の環状・連圏状の小型から
大型の紅斑が多発しており、紫斑を伴うところもある。全身状態は極めて
良好。
さて診断は?
A.蕁麻疹様血管炎
初診時に強く蕁麻疹様血管炎を疑い、即、皮膚生検(組織検査)、血液・
尿検査を実施しました。病理組織学的に真皮上層の血管炎の所見があり、
血液検査では、P-ANCA、C-ANCA、クリオグロブリン、クリオフィブリノ
ーゲン、抗カルジオリピン・β2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラント
等全て陰性、免疫グロブリン正常範囲、補体価・C1q正常範囲、抗核抗体陰性
であり、非低補体血症性蕁麻疹様血管炎と診断しました。
実はこの症例、困ったのは治療法です。この方、ふだんはアメリカ在住で、
10/12初診の時点で、10/22に帰国する、とのことでした。長期フォローでき
ないケースですから、ステロイド内服やDDSは使えない・・・そもそも10/12
の時点では蕁麻疹様血管炎の確定診断はついていないので、上記の薬は使い
づらい・・・しかもアメリカの医療保険に入っていないとのことで、帰国後に
頻繁な採血を伴う薬は最初からは導入しづらい、という点もネックでした。
そのため、生検と同時に、抗ヒスタミン薬とインドメタシン内服および
ステロイド外用を開始しました。
本日抜糸時には皮疹の新生はなく、初診時に比べて皮疹は1/10程度まで減少
していました。