手術をしていると、様々な腫瘍の患者さんが受診

されます。

今日は、術前の画像検査の重要性のお話し。

症例1:68歳、女性

現病歴:10年前に左側頸部に皮下腫瘤が出現し

脂肪腫と言われ放置。徐々に増大してきたため

切除希望にて当院初診。初診時、左側頸部に

ドーム状に隆起する直径6cm大の皮下腫瘍があり、

皮表との可動性良好、下床との可動性不良。

 

さっそく、術前の評価として腫瘍直上でエコーを

あててみると・・・

 

 

あれ??皮下組織に腫瘍は見当たりません。

で、MRIを撮影すると・・・

 

 

 

やはり筋層内脂肪腫でした。

全身麻酔が必要になりますので、総合病院整形外科

を紹介としました。術前にきちんと評価せずに手術

してしまっていたとしたら、切ってから初めて筋肉内

に腫瘍があることに気づき、手術中断、という事態に

陥ります。

 

 

症例2:35歳、女性

現病歴:5,6年前から左前頸部に皮下腫瘤が出現し

徐々に増大してきたため切除希望にて当院初診。

初診時、左前頸部に直径10cm大の皮下腫瘍があり、

触診ではかなり深部に触知。ひょっとしてこれは・・・

とエコーを当ててみると・・・

 

 

甲状腺腫瘍でした。頸動脈・頸静脈を取り囲んでいます。

で、MRIを撮影すると・・・

 

 

甲状腺癌疑いでした。

甲状腺で有名な病院を紹介したところ、生検にて、

甲状腺乳頭癌で、左内深頸静脈リンパ節転移陽性

であり、甲状腺全摘術+左外側区域リンパ節郭清術

となりました。皮膚科に初診で甲状腺癌の患者さんが

来ることがある、という教訓です。

僕は、皮下腫瘍あるいは皮内腫瘍、およびその疑診例

(例:皮膚線維腫か粉瘤か判断困難例など)に関しては

エコーをルーチンとしており、そこでスクリーニング後

必要な場合は積極的にMRIもオーダーしています。

手術を行う場合は、手術手技以前に、術前評価がまずは

重要である、ということです。