茶のしずく石鹸含有グルパール19Sによる小麦アレルギーは、
その存在が判明してから早8年、outgrow(寛解)する患者さんが
多くいらっしゃる一方で、未だ治らずに苦しんでいる患者さんも
いらっしゃいます。
また、医療機関においても、集団訴訟で一応の決着が出てからは、
もう検査を取り扱わなくなったところも多いようです。
そのため、まだ検査を実施しているクリニックとして、茶のしずく
石鹸の製造元である(株)悠香から、時々患者さんが検査目的に
当院を紹介され、検査を行っております。(先日はなんと栃木県から
受診された方も・・・)
具体的に検査は何をするかというと、
・プリックテスト(0.01%グルパール19S溶液、0.1%グルパール19S
溶液)
・血清抗体価測定
を行います。診断基準のgolden standardは、プリックテスト陽性
であり、長期の経過において、抗体価の方が早く陰転化することが
わかっており、当院の患者さんにおいても、最近では、症状が軽微
となってきているケースにおいては、抗体価陰性、プリックテスト
において0.01%グルパール19S陰性、0.1%グルパール19S陽性、という
ことがほとんどです。(なお血清抗体価は藤田医科大学に依頼して
測定します。)
しかし、今日当院を紹介初診された患者さんは、未だに、小麦を
摂取+家事程度の軽い運動負荷においても膨疹が出現し、
呼吸器症状も伴う、とのことでした。2年前の検査結果を持参
され、抗体価は経時的に低下傾向でしたが陽性でした。
過去のプリックテストにおいてアナフィラキシー反応が生じて
いなかったことを確認(8年前に社会問題化した早期の頃は、
強いアレルギーの方も多く、プリックテストにおいても
アナフィラキシー反応を起こすことがあり、点滴ルートを確保
し、バイタルを測定しながらプリックテストを行っていました。
当院でもアナフィラキシーを起こして、ボスミンを投与した
ケースも過去にはありました。長期経過した現在においては
そこまでの強い反応が残っているケースは経験していません。)
の上で、プリックテストを実施しました。
結果は、膨疹径において、
0.01%グルパール19S溶液 5mm X 5mm
0.1%グルパール19S溶液 10mm X 10mm
小麦抗原溶液 0mm X 0mm
パン抗原溶液(ω5グリアジン相当) 0mm X 0mm
生理食塩水 0mm X 0mm
2%ヒスタミン溶液 5mm X 5mm
と、0.01%グルパール19S溶液に対しても陽性反応であり、
まだ感作がそれなりに残存していることが示唆されました。
社会問題化した別の件としては、カネボウの化粧品(ブランシール
等)に含有のロドデノールによる脱色素斑の問題があり、やはり
未だに症状が残存している患者さんもいらっしゃいます。
これからも長期的なデータの集積が待たれます。