今日は難問。

症例:30代、女性

既往歴:小児期にアトピー性皮膚炎

現病歴:20代の頃によく日焼けをしていた。その後、頚部・体幹部・上肢

の広範囲に褐色斑が出現してきた。炎症後色素沈着と某大手美容クリニック

で診断され、IPLを複数回照射したが改善しなかった。

治療希望にて当院を初診した。

現症:

 

 

頚部・体幹部・両上肢の広範囲に、軽度の浸潤を触知する境界やや不明瞭な

褐色斑が多発している。問診上、皮疹に痒みなどはなく、炎症を起こしたこと

はないという。

 

 

さて診断は?

 

 

A. mastocytosis(肥満細胞症)

 

 

初診時、菌状息肉症を疑い、生検を実施しました。なお、同時に実施した

血液検査では、

血算・分画像:異常所見なし

一般生化学検査:正常範囲内

IgE 192↑(<170),TARC 750↑(<450),sIL2-R 172(157~452)

でした。

病理組織検査が返ってきて、びっくりしました。

肥満細胞症なら、患部に刺激を与えると蕁麻疹が生じて痒いはずなのに、

一言も痒いとは言ってなかったぞ・・・

で、抜糸+病理組織結果の説明時にもう一度聞いてみると、

・皮膚をひっかくと蕁麻疹や時には水疱も形成することがある

・熱い風呂や飲酒で意識朦朧となることもある

・上記症状は今回の件とは関係があると認識していなかった

ことが判明しました。実際にDarier徴候陽性でした。

鑑別診断に肥満細胞症を入れていなかったため、疾患特異的な問診が

できていなかったんですね。反省です。

抗ヒスタミン薬内服及びステロイド外用薬による治療を開始しました。

なお、成人発症の肥満細胞症は、全身精査(CT、骨髄穿刺等)が必要な

ため、また、長期的に他臓器への浸潤のリスクもある事から、血液内科

を紹介し、併診することとしました。

 

 

この症例で驚きだったのは、何も考えずにIPLを照射した医者がいること

でした。そもそも「炎症後色素沈着」にIPLはNGだし、二重の意味で、

残念な、というかなんというか・・・

美容クリニックを受診する際には、ご注意を。