こんにちは
院長の櫻井です
先週金曜日に、比較的珍しいけれども教科書的な症例を経験しましたので、ご報告します
症例:4歳、女児
既往歴:特記すべきことなし
現病歴:初診日の朝より頸部・肘窩・腋窩に紅斑が出現してきたため当院を初診。
現症:全体的にdry skinが著明で、いわゆる鳥肌様の皮膚である。
頸部・肘窩・腋窩に軽度浸潤をふれる紅斑が存在する。触ると痛みがある?
口囲は乾燥し、亀裂を伴う。眼脂+。体温は平熱。全身状態は良好。
さて診断は?
A.SSSS(staphylococcal scalded skin syndrome:
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
発症早期例でしたので、診断は少し迷いましたが、発熱がないことを除いてはまさに典型例でした。
当日実施した迅速血液検査でも、WBCの軽度上昇・CRPは正常範囲であり、念のため実施した
溶連菌迅速検査も陰性でした。発症早期のため、バイタルの変化や血液検査の動きがないと
解釈し、SSSSと診断しました。鳥肌様の皮膚もあり、間擦部の紅斑があることから、アトピー性皮膚炎
も鑑別に挙がりますが、急性の経過であること、擦過痛の存在および目・口の症状から、否定的と
考えました。猩紅熱も鑑別ですが、擦過痛の存在および目・口の症状から、否定的と考え、溶連菌
検査陰性であることもそれを支持する所見と考えました。
抗菌剤を何にすべきか考えましたが、経過中入院が必要となった場合に、翌日が土曜日で入院施設
も限られてしまうこともあり、MRSAが起炎菌であった場合のことを考え、ミノマイシン内服+クラビット
点眼+口囲にゲンタシン軟膏外用(プロペトでもいいのですが)を開始しました。
本日再診時には紅斑は落屑を伴い消失し、顔の皮疹も軽快しておりました。
SSSSは、黄色ブドウ球菌の毒素による疾患であり、感受性のある抗生剤による治療が原則となり、
Nicolsky現象陽性となるため全身にびらんが多発することがあり、その場合は全身管理が必要と
なるため入院治療が必要となります。
今回の症例に関しては、発症早期例であり、早期に感受性のある抗菌剤を投与できたので、
全身に皮疹が拡大することなく、数日で軽快せしめることができました。
SSSSは、比較的珍しい疾患ですが、今回の症例はまさに典型例であり、教育的な症例であった
と考えます。