ようやく最終章。
それでは私の治療方針について。
まず、どんな疾患でも、治療する大前提として
・治療をすることによるメリットの方が、治療をすることによるデメリットより大きい
・治療をすることによるメリットの方が、治療をしないことによるメリットより大きい
ということがあります。
水いぼに関して言えば、唯一確実な「治療」は、摘除ですから、ここでは、「治療」=「摘除」と
することにしましょう。また、水いぼ「治療」をする目的といえば、ほぼ「プールに入れること」ですから、
「治療をすることのメリット」=「プールに入れること」とすることにしましょう。(現実問題、プールに
入らない子供の場合、治療を希望するケースはまれです。)
そうすると、上の文を読み替えれば、
・水いぼを摘除することにより早く治癒しプールに入れることの方が、摘除することによる痛み・恐怖
よりも優先する
・水いぼを摘除することにより早く治癒しプールに入れることの方が、痛み・恐怖を味あわずに自然に
治癒するのを待つよりも優先する
ということになります。
ここで問題となってくるのが、
では全て摘除すれば治癒といえるのか?
という問題です。ここまで述べてきたとおり、水いぼは、潜伏期間がありますから、摘除したからと
言って、完治したとは断言できない感染症ですし、実際の臨床でも、摘除しきっても数日後にはまた
新生して再度摘除するケースが後を断ちません。
そうすると、「水いぼを摘除することにより早く治癒しプールに入れる」という命題自体が成立し難く
なってきます。
前置きが長くなりました。
以上を踏まえての、私の治療スタンスを述べます。(以下、①は第一選択、②は第2選択)
・プールに入っていない子供の場合
→①ヨクイニン内服ないしは自然治癒を待つ。②2,3個程度であれば、親が希望した場合に限り摘除。
・プールに入っている子供の場合で、子供自身がプールに入りたいという場合
→①10個程度であれば摘除。②それを超える数の場合はヨクイニン内服。プールは禁止。
・プールに入っている子供の場合で、子供自身がプールに入らなくてもいいという場合
→プールに入っていない子供の場合に準じる。
としています。
もちろん、「10個程度」とするのには何も科学的根拠はなく、経験上、この程度であれば、
摘除した場合の方が自然治癒するまでの期間より短いかな、という印象があるためです。
先日述べた、アメリカの防水テープ指導の際の「潜伏期間に関しての洞察が抜けている」にも
通じてはしまいますが・・・。
私が医学的に正解だと考えるのは、イギリスのガイドラインの、「水いぼの治療は不要であり、
プールの制限も必要ない」ですが、先日述べた通り、これは日本においては一般の方々に
受け入れられ難いと思いますので、そこを勘案して、また、公衆衛生的な観点から(つまり感染を
拡大させないという観点から)、このようなスタンスに至りました。(さらに重箱の隅をつついた
説明をすれば、そもそも水いぼを自身が持っていることに気づかずにプールに入っている子供
も必ずいるので、10個程度しかない水いぼを摘除した後の子供からの無症候性ウイルス排泄量は、
それと比較すれば十分無視できる範囲ではないか、と考えられます。)
長々と書いてきましたが、水いぼに関しての私の治療スタンスは以上のごとくです。
お付き合いありがとうございました
※シャルムクリニックは、1/8(水)より、水曜日の診療も開始いたしました
水曜日はまだまだ認知されていないこともあって待ち時間が非常に少ないですので、
いぼの液体窒素治療や、水いぼの治療など、定期的に同じ治療を受けられている方、
また、病状が安定しており長期間同じ薬を継続されている方、お仕事が忙しくなかなか病院の
待ち時間を確保できない方、など、水曜日の受診がおすすめです
水曜日は保険診療のみの診療となりますので、自由診療ご希望の方は、それ以外の曜日の
ご受診をお願いいたします。(自由診療の、2回目以降の点滴、および、薬の処方のみの方は
受付可能です。)