こんにちは
院長の櫻井です
当院では陥入爪治療を積極的に行なっているためか、多くの陥入爪の方が受診されます。
当然その中には、高齢の方も多くいらっしゃり、その場合、高血圧や糖尿病などの内科的疾患
を合併しているケースも多く見られます。
ごく軽度の陥入爪を除いては、やはりフェノール法が主たる治療となります。
ここで問題となるのが、末梢の循環が悪い場合、観血的治療(手術)を行うと、結果、傷が難治性と
なるため、末梢循環不全においては手術は禁忌となる点です。
すなわち、高齢者においては末梢循環不全を合併しているケースが隠れていることがあり、
その場合は、手術はNGとなります。もともとPAD(peripheral arterial disease:末梢動脈疾患)を
指摘されて治療しているケースは、問診でわかりますので問題ないのですが、問題となりうるのは、
これまで指摘されていないケースです。術前に足背動脈や後脛骨動脈を触知することで、PADの
簡単なスクリーニングにはなるのですが、健常人でも10%程度で動脈が触知しないことも知られて
いますし、足背動脈や後脛骨動脈レベルでpalpableであっても、より末梢の動脈の血流が
低下していることをしばしば経験します。(例:糖尿病によるmicro angiopathy)
そこでどうするのか?
ここで非常に有用なのが、SPP測定装置です。
※SPPとは?
Skin Perfusion Pressure(皮膚潅流圧)の略。重症虚血肢の血流測定において、血管石灰化の
影響を受けないため、糖尿病性足病変や難治性潰瘍の治癒予測に極めて有用。(>40mmHgが
治癒可能かどうかのボーダーライン)もちろんPADのスクリーニングにも有用。
これにより、手術に踏み切っていいのかどうかの安心なスクリーニングが可能となります。
実際の手順をお見せしましょう。
症例:80代、女性
術前写真
SPP測定現場
SPP(足背)
SPP(足底)
これらの値から、手術は十分可能と判断し、フェノール法を実施。
術直後写真
このように、術前にSPP測定を加えることにより、安全な治療が行えることとなります。
正直なところ、SPP測定は保険点数では100点(3割負担で300円)と非常に安く、機械の
導入コストを考えると、笑ってしまうくらいに超赤字の検査です
しかし、術前検査としてだけではなく、いわゆる難治性潰瘍における治癒見込みの予測や、
PAD患者・糖尿病患者の足病変における治療方針(debriedementをしてもよいのかなど)
の決定等において非常に有用ですので、やはり、診療のqualityを高めるために、プロの皮膚科医
として、私は、この検査を非常に重宝しています