今日は難しい症例です。
症例:70代、女性
現病歴:数ヶ月前から両大腿部に紅斑が出現してきたため当院受診。
既往歴:高血圧、糖尿病(HbA1c 6%台)、骨粗鬆症
現症:写真に示すように、両大腿部に、自覚症状を伴わない、500円玉大までの境界明瞭で円形の
浸潤を触れる紅斑が多発する。
初診医は乾燥性湿疹を疑いvery strong classのステロイド外用剤にて加療するも変化なく、
次に私が診察し、真菌顕微鏡検査は陰性、ステロイド外用剤をstrongest classに変更して
2週間経過を見たが不変であったため、まずはparapsoriasis en plaqueを考え、生検を
実施しました。
抜糸時の所見です。
なんと皮疹は全て消失していました。(赤く見える部分はガーゼを固定するテープが貼ってあった
部位です。)
さて診断は?
A.環状肉芽腫
病理組織では、palisading granulomaは存在せず、膠原線維間に組織球が浸潤し、
ムチンの沈着を認め(アルシアン・ブルー染色にて確認)、いわゆるinterstitial typeの
granuloma annulareでした。
糖尿病の既往、生検後に自然消退、というまさに教科書的な経過をたどりました。
この症例が難しかったのは、皮疹が環状肉芽腫に典型的な環状に隆起する局面を呈した
のではなく、ほぼ平坦な紅斑局面を呈していた点です。
皮膚科診療における生検の重要性を改めて噛みしめました。