本日の症例より。

これは教科書的には有名ですが、皮膚科専門医でもマニアックな人でないと実際の臨床の場で

診断をする機会は少ないであろう疾患です。

症例:40代、女性

現病歴:両足の指の間の皮がむけてきたため、水虫と思い当院初診。

現症:両足趾間に落屑あり。自覚症状は伴わない。真菌顕微鏡検査は陰性。部屋を暗くして

Wood灯(ブラックライト)を当ててみると蛍光ピンク色に光る。

さて診断は?

A.紅色陰癬

紅色陰癬は、Corynebacterium minutissimumによる皮膚感染症で、湿疹や水虫に併発することも

よくあります。

薬剤感受性は非常に良好で、ゲンタマイシンにも感受性があり、さらにはイミダゾール系抗真菌薬

にも感受性があるため治療は容易です。ですから、紅色陰癬自体の診断がついていなくても、

本疾患については、湿疹としてリンデロンVG軟膏を塗ったり、水虫の診断のもとルリコンクリームを

外用したりしても気づかれないうちに治っていることも多いと思います。

問題となるのは、イミダゾール系以外の抗真菌薬や、抗生物質非含有ステロイド外用剤を使用した

場合です。この場合、水虫や湿疹は良くなっても紅色陰癬は残る可能性があります。(局所の皮膚

症状が改善した結果治ってしまうこともある。)

Wood灯検査は、部屋を暗くしてブラックライトを当てるだけの検査で、すぐに診断がつきますし、

全く侵襲性はなく、また、患者自己負担も発生しない(保険診療点数においてWood灯検査は収載

されていない。皮膚科医的には、とほほ・・・、なんですがあせる)という、いい検査なんですが、

大学病院の真菌症外来ぐらいでしか通常は行われていないのが実情です。そのため本疾患が

正しく診断される機会というのは少ないんですね。

しかし私はかなりマニアックな皮膚科医であると自負しておりますので、足や鼠径部の皮膚疾患

において、あれ?、と思った時には必ずWood灯検査を実施しています。そうすると実は全然珍しく

も何ともなく、ちょいちょいお目にかかる疾患であることがわかります。