今日は教科書的な診療ケース。

症例:40代、女性

現病歴:9月頃から両上下眼瞼に痒みのある紅斑が出現。もともと花粉症、アレルギー性鼻炎もあり、

眼科でネオメドロールEE軟膏、パタノール点眼を処方されるも徐々に増悪してきたため、当院初診。

既往歴:うつ病、気管支喘息、緑内障(6月からグラナテック点眼を処方されている)

現症:両上下眼瞼縁に境界明瞭で浸出液を伴う浮腫性紅斑が存在し、強い掻痒を伴う。両眼球結膜

は充血しており、やはり強い掻痒を伴う。

さて、まずすべき検査は?

A.スクラッチ・パッチテスト

まずは点眼薬の接触皮膚炎を強く疑いました。

3種類の点眼薬および、当院に常備しているeyelid dermatitis用パッチテスト系列(ドイツから

輸入したもの。コバルト、フラジオマイシン、防腐剤等を含む。)を用いて

スクラッチ・パッチテスト

を実施しました。(パッチテスト中は抗ヒスタミン剤内服はNGのため、眼瞼炎に対する治療は、

キンダベート軟膏外用+越婢加朮湯内服としました。)

パッチテストの結果写真(1週間目)を示します。


48時間目、72時間目にてすでに、グラナテック点眼およびコバルトに対して陽性反応があり、

72時間目の時点で眼科受診を指示し、グラナテックは中止となりました。コバルトについては、

まぶたとの関連を考え、ビューラー使用の有無につきお聞きしましたが、ビューラーは使用して

いないとのことでした。(なお、既往疾患に対する投薬との関連において緑内障の治療は今後

点眼薬ではなく手術となるということでした。)

1週間目の時点で、やはりコバルト、グラナテックのみ陽性で、ネオメドロールEE軟膏および

フラジオマイシンは陰性であり、また、眼瞼炎は軽快しておりましたので、本症例は、

グラナテック点眼による接触皮膚炎と確定診断に至りました。(あえてこの症例で教科書的ではない

点を挙げれば、フラジオマイシンが原因薬ではなかったところでしょうか。)

パッチテストは手間がかかりますが、このようにクリアーに結果がわかりますので、皮膚科専門医

としては、積極的にすべき検査と言えます。