今日は教科書的典型例から。

症例:80代、女性

現病歴:2年前より前頭部・側頭部の生え際に脱毛が出現。近医にて円形脱毛症と

言われ、ステロイド外用、液体窒素治療を受けるも徐々に進行してきたため当院

初診。

現症:前頭部および側頭部の生え際に脱毛した局面が存在し、よく見ると皮膚は

軽度萎縮し光沢を伴う。その脱毛局面内に残存する毛髪の根元は白色に角化隆起

する部分もある。全身の他の部位に特記すべき皮疹はない。

さて診断は?

A.postmenopausal frontal fibrosing alopecia

ダーモスコピー(この場合はトリコスコピー)で毛根が消失しており、

diagnosis at a glance(見た瞬間に診断)でした。確認のための生検も実施し、

瘢痕性脱毛との診断に至りました。

本疾患はlichen plano-pilarisの亜型として分類されていますが、その特徴的な

臨床像から、一度経験すれば二度と見誤ることはない疾患です。

ただし、治療は非常に難しく、瘢痕性脱毛であることから、進行を食い止めること

が治療の目的となります。治療法も決まったものはなく、あくまで症例報告がある程度です。

本症例に関しては、高齢であること、通院が困難であることから、脱毛部位との

境界部分の毛が残存している部分にステロイドを外用し経過を見ることとしました。