今日は皮膚科専門医にとっては常識ですが、そうでなければ多分わからない
問題。
症例:90代、男性
現病歴:ここ最近になり下肢に水疱が1,2個ずつ出没を繰り返すようになったため
当院初診。
現症:左下腿伸側に1ヶ所500円玉大の弛緩性水疱が存在し、また、以前の
水疱治癒部位に色素沈着が見られる。
さて、鑑別診断は?(ここまでは簡単)
A.水疱症(特に類天疱瘡)、虫刺症(ノミなど)
ここで、まず血液検査を行いましたが、抗Dsg1抗体・抗Dsg3抗体・抗BP180抗体・
抗核抗体は陰性であり、IgA・IgG・IgM・血中好酸球数も正常範囲内でした。
しかし、血液検査において、その血清を用いてある検査をしておいた結果、
類天疱瘡と確定診断できました。
さてその検査とは?
A.蛍光抗体間接法
本症例においては、蛍光抗体間接法においてBMZにIgGがlinearに沈着し、split skin
において、表皮側に反応していました。
おそらく病勢が低いため血中抗BP180抗体価は正常範囲にとどまっていたものと
考えました。(もちろん、抗BP230抗体単独陽性BPの可能性等は否定できませんが。)
類天疱瘡と確定診断がついた以上は、現状は軽症のため外用療法のみですが
今後病勢によっては全身に水疱が多発してくる可能性があるため、要経過観察
となります。
※私は、水疱症・血管炎・LEを疑った場合に蛍光抗体直接法ならびに間接法を
ほぼルーティンで行っております。蛍光抗体法は総合病院でも実施がなかなか
難しい検査ですが、当院は東京大学医学部附属病院皮膚科のご厚意により
実施できています。
手はずを整えてくれた谷口先生、本症例の判定をしてくれた乙部先生、並びに
医局の皆様には感謝する次第です。