こんにちは
院長の櫻井です
今月・来月と、製薬会社で乾癬についての講演をすることとなり、当院での乾癬の
治療の現状について調べ、検討してみました。(データは先月のカルテを調べました。)
乾癬とは、ここでは尋常性乾癬・関節症性乾癬・滴状乾癬・膿疱性乾癬とし、
掌蹠膿疱症は除いています。
・患者数:59人(1ヶ月のカルテの1%程度)
→夏場で乾癬が改善する時期であること、またとびひや水虫など他の皮膚疾患が増悪し
皮膚科外来患者数が増加する時期であることから、カルテベースでの患者数に占める
割合は少なかったのかなと考えました。
・外用治療
ステロイド+ビタミンD3:50人
ステロイドのみ:7人
ビタミンD3のみ:2人
→教科書的にはビタミンD3のみに移行するのが理想的とされていますが、乾癬の診療
をする皮膚科専門医であればわかるように、そう簡単ではないですね。
ステロイドのみの患者さんは、透析中でビタミンD3外用が禁忌のケースや、医療費の
問題(ビタミンD3はステロイドに比べると高額)で使えないケースでした。
ビタミンD3のみの患者さんは、D3のみで非常に経過良好なケース、ステロイド忌避の
ケースでした。
・内服治療
シクロスポリン:2人
チガソン:5人
リウマトレックス:2人
オテズラ:7人
→リウマトレックスの2人はいずれも関節症性乾癬でした。(重度のケース、CRP高値の
ケース、進行速度の速いケースなどは生物学的製剤導入目的に総合病院や大学病院
を紹介していますので、当院で診察している関節症性乾癬は比較的軽症例です。)
チガソンとシクロスポリンは乾癬治療の柱の一つであり、特にチガソンは皮膚科医以外
は使うことのない薬です。シクロスポリンはもっと使っている印象がありましたが、
最近では新規のそれなりの症状の症例においてはオテズラやUVBに促している
ためでしょう。オテズラはその副作用の少なさ・簡便さから、今後、より処方数は
増えていくと考えます。
・生物学的製剤
ヒュミラ:1人
病診連携で維持療法として行っているケースです。
・光線療法
全身照射型ナローバンドUVB療法:20人(うちチガソン併用、いわゆるRe-NBUVBは3人、
オテズラとの併用は2人)
→当院の乾癬の治療の特徴として、光線療法を積極的に行なっていることが挙げられ
ます。それだけ、乾癬が外用治療だけでは難治であることを物語る数値であろうと思います。
当院の全身照射型ナローバンドUVB照射器は、千葉県では他に数件の大学病院及び総合
病院にしか導入されていない非常にハイスペックな機器であり、クリニックで導入している
のは当院のみです。(もっと簡易版の機器もあるのですが、性能がまるで違います。この
機器を購入する時にメーカーから言われたのは、他がカローラならこれはベンツ、という
ことでした。実際、他院で光線療法をしたがよくならなかったケースでも、当院で光線療法
をしてよくなったケースを複数件経験しております。)
通常、大学病院や総合病院などでは、光線療法は予約制となっていることがほとんどであり、
当院はクリニックでありフットワークが軽いというメリットを活かして、予約制ではなく通常の
外来診療の一環として光線療法を行っております。
光線療法は様々な疾患に有用であり、当院では、他にも、アトピー性皮膚炎を代表とする
かゆみの強い皮膚疾患や、白斑、掌蹠膿疱症、円形脱毛症などなど様々な疾患に対して
光線療法を行い良好な成績を上げております。疾患およびその面積から、全身照射型
ナローバンドUVB、部分照射型ナローバンドUVB、ターゲット照射型エキシマライトを
使い分けています。

全身照射型ナローバンドUVB

部分照射型ナローバンドUVB

ターゲット照射型エキシマライト
アトピー性皮膚炎が、ともすると内科や小児科などでもみてしまわれがちなのに対して、
乾癬という病気はそもそもの診断が皮膚科医でなければ困難なこともある、治療法も
光線療法やチガソン・オテズラなどは他科では全く使わない方法である、という点で、
皮膚科医の実力をいかんなく発揮できる分野です。
これからも益々乾癬の診療に注力していきたいと思います。