今日は治療に頭を使った症例。
症例:50代、男性
現病歴:11/7から感冒症状が出現し、11/9から躯幹・四肢に痒み
のある浮腫性紅斑が出現、11/11に38℃の発熱とともに皮疹が
増悪し内科を受診したところ、皮膚科受診を指示され、同日
当院受診となった。
現症:写真に示す。38℃台の発熱はあるが、全身状態はそれほど
悪くはない。
さて診断は?
A.蕁麻疹様血管炎
臨床像から上記を強く疑い生検を実施しましたが、院内迅速採血にて
WBC10300(Neut82.0%),CRP12.3と強い炎症反応があり、さて
ここでどうすべきか考えました。やはり血管炎だけでこのCRPの
説明はつかず感染症の併発は確実にあると考え、ステロイド導入
は見送り、感染症に対してユナシン点滴+ジスロマック内服、
血管炎に対してインテバン内服・抗ヒスタミン剤内服を開始しました。
土曜の夕方でしたので、月曜日再診時に改善がなければ入院を検討
としました。
11/13再診時には皮疹は紫斑以外は消失、WBC9800,CRP12.1と、炎症
反応は横ばいでしたが本人の自覚症状も著明改善し、外来での点滴加療
を継続としました。
11/14再診時に腹部に紅斑の新生が見られ、レクチゾール内服開始、
WBC9400,CRP10.8。
11/15再診時に皮疹は消失、WBC4800,CRP7.6。
11/16 WBC 4300,CRP4.7、本日11/17WBC4300,CRP2.6と改善しました。
病理組織も届き、真皮上層の血管炎の所見があり蕁麻疹様血管炎と
確定診断に至りました。初診時の採血にて、P-ANCA、C-ANCA、
クリオグロブリン、クリオフィブリノーゲン、抗カルジオリピン・
β2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラント等全て陰性、
免疫グロブリン正常範囲、補体価・C1q正常範囲、抗核抗体陰性
であり、非低補体血症性蕁麻疹様血管炎と診断しました。