製薬会社で乾癬についての講演をすることとなり、当院での乾癬の

治療の現状について調べ、検討してみました。(データは1月のカルテ

を調べました。)なお類縁疾患でもある掌蹠膿疱症も一緒に入れて

います。

 

 

・総患者数:65人(1ヶ月のカルテの1%強)

 

・外用治療

ステロイド+ビタミンD3:56人

ステロイドのみ:8人

ビタミンD3のみ:1人

 

→教科書的にはビタミンD3のみに移行するのが理想的とされていますが、

乾癬や掌蹠膿疱症の診療をする皮膚科専門医であればわかるように、

そう簡単ではないですね。

ステロイドのみの患者さんは、透析中でビタミンD3外用が禁忌のケースや、

医療費の問題(ビタミンD3はステロイドに比べると高額)で使えないケース

やビタミンD3による刺激性皮膚炎あるいは落屑反応で使えないケース

でした。

 

 

・内服治療

シクロスポリン:4人

チガソン:4人

リウマトレックス:2人

オテズラ:12人(うち2人はリウマトレックスと併用)

 

→リウマトレックスの2人はいずれも関節症性乾癬でした。(重度のケース、

CRP高値のケース、進行速度の速いケースなどは生物学的製剤導入目的に

総合病院や大学病院を紹介していますので、当院で診察している関節症性

乾癬は比較的軽症例です。なお、最近皮膚科学会の規定が変わり、今後、

クリニックでも基幹病院と連携し、かつ、学会の生物学的製剤導入認定施設

と認可を受けていれば生物学的製剤導入が可能となりました。現在、当院も

認可申請中です。)

2名ともオテズラと併用しており、症状が落ち着けばリウマトレックスは

中止していく予定です。

 

チガソンとシクロスポリンは乾癬治療の柱の一つであり、特にチガソンは

皮膚科医以外は使うことのない薬です。シクロスポリンはその切れ味のよさ

から僕は好きな薬ですしアトピー性皮膚炎でもよく処方しているのですが、

最近では新規の乾癬のそれなりの症状の症例においてはオテズラ+UVBの併用

治療に促しているため、オテズラが頭一つ抜けています。やはりオテズラは

その副作用の少なさ・簡便さから、今後、より処方数は増えていくと考え

ます。

 

・生物学的製剤

ヒュミラ:1人

 

病診連携で維持療法として行っているケースです。

 

・光線療法

全身照射型ナローバンドUVB療法:27人(うちチガソン併用、いわゆる

Re-NBUVBは3人、オテズラとの併用は7人)

 

当院の乾癬の治療の特徴として、光線療法を積極的に行なっていること

が挙げられます。それだけ、乾癬が外用治療だけでは難治であることを物語る

数値であろうと思います。

 

通常、大学病院や総合病院などでは、光線療法は予約制となっていることが

ほとんどであり、当院はクリニックでありフットワークが軽いというメリット

を活かして、予約制ではなく通常の外来診療の一環として光線療法を行って

おります。

光線療法は様々な疾患に有用であり、当院では、他にも、アトピー性皮膚炎を

代表とするかゆみの強い皮膚疾患や、白斑、掌蹠膿疱症、円形脱毛症、

菌状息肉症などなど様々な疾患に対して光線療法を行い良好な成績を上げて

おります。

疾患およびその面積から、全身照射型ナローバンドUVB、部分照射型ナロー

バンドUVB、ターゲット照射型エキシマライトを使い分けています。

 

 

全身照射型ナローバンドUVB

 

 

部分照射型ナローバンドUVB

 

 

ターゲット照射型エキシマライト

 

 

アトピー性皮膚炎が、ともすると内科や小児科などでもみてしまわれがち

なのに対して、乾癬という病気はそもそもの診断が皮膚科医でなければ

困難なこともある、治療法も光線療法やチガソン・オテズラなどは他科

では全く使わない方法である、という点で、皮膚科医の実力をいかんなく

発揮できる分野です。

これからも益々乾癬の診療に注力していきたいと思います。