昨日は毎年参加している光線療法のセミナーに参加してきました。

 

~光線療法とは

光線療法(紫外線治療)とは、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、皮膚科の治療の中では薬物治療・外科的治療に並ぶ大きな柱の一つであり、また、他の科にはない特徴でもあります。乾癬・掌蹠膿疱症・白斑・円形脱毛症・難治性アトピー性皮膚炎・皮膚掻痒症・結節性痒疹・類乾癬・皮膚悪性リンパ腫など様々な疾患に有効です。

歴史的にはGoeckerman療法が有名ですが、現在主に行われている治療としては、PUVA療法・ナローバンドUVB療法・UVA-1療法・エキシマライト療法・エキシマレーザー・チタンサファイアレーザーがあります。

それぞれ長所・短所、適応疾患の若干の違いなどがありますが、当院では、ナローバンドUVB療法、エキシマライト療法、UVA-1療法、チタンサファイアレーザーを採用しております。すべて保険適応の治療です。

 

光線療法は非常に有用な治療法であり、内服薬・外用薬だけでは一筋縄では

いかなかった病態を、一気に解決に導いてくれることもしばしば経験します。

どのタイミングで光線療法を開始するのかには医師の個人差がありますが、

私は少しでも一般治療に抵抗性と考えた場合には、次の手として積極的に

導入しています。

しかし光線療法が万能かというとそうではなく、やはり限界もありますし、

また、その場合にさらに次の手をどうするか、という問題があります。

昨今は生物学的製剤やJAK阻害薬の登場により、ややもすると光線療法が

軽視される傾向もありますが、生物学的製剤が万能ということでもなく、

また、医療経済を考えると何でも生物学的製剤に頼ることは医療従事者と

して、当然あるべき姿ではありません。

今回のセミナーでは、僕が普段実施していること・考えていることが

正しかったことを再確認でき、また、光線療法の新たな知見を得ることが

でき、勉強になりました。

 

 

 

 

ナローバンドUVB療法は、1984年に開発されて以来30年超の歴史のある治療で、当初は乾癬の治療として使われてきましたが、その後、白斑・掌蹠膿疱症・円形脱毛症・難治性アトピー性皮膚炎・皮膚掻痒症・結節性痒疹・類乾癬・皮膚悪性リンパ腫など様々な疾患に対しても有効であることがわかり、現在ではPUVAにとってかわり、紫外線治療のファーストチョイスとして頻用されています。当院では全身照射型および部分照射型のナローバンドUVB治療機を2種類採用しており、これにより広範囲の病変に効率的に光線を照射することができます。 

エキシマライト療法はここ10年ほどで開発された機械で、基本的にはナローバンドUVB療法と適応疾患は同じですが、まだ歴史は浅いものの、特に白斑に対する有効性が高く注目されています。エキシマライトはターゲット照射であり、広範囲の照射よりも、むしろ難治性病変に対するスポット照射に威力を発揮するため、特に白斑や円形脱毛症の治療におすすめです。

チタンサファイアレーザー「パラス」は2021年に国内承認されたレーザーで、311nmのレーザーを照射します。基本的にはナローバンドUVB療法と適応疾患は同じですが、まだ歴史は浅いものの、特に白斑に対する有効性が高く注目されています。
エキシマレーザーと比べて紅斑反応が出にくいので、特に露出部の照射に秀でています。
ターゲット照射型で1回の照射面積も小さいため、広範囲の照射には向いていず、頭頚部などの難治の点在する白斑や、多発型の円形脱毛症や、痒疹結節などに有用性が期待できます。逆に広範囲の照射は、従来通り、ナローバンドUVBやエキシマライトで対応します。

UVA-1療法は2021年から国内で承認された治療で、ナローバンドUVBやエキシマライトよりも皮膚の深層に到達できるため、掌蹠膿疱症・難治性手湿疹・痒疹・皮膚悪性リンパ腫などに特に有用です。また、強皮症の皮膚硬化にも有効性が確認されています。