今日は教科書的典型例から。
症例:60代、男性
現病歴:躯幹・四肢に数週間前から痒みのある紅斑・小水疱が散発
してきたため当院初診。
現症:写真に示す。躯幹・四肢に5mm大程度までの痒みのある境界
明瞭な浮腫性紅斑・緊満性小水疱が散在。
さて診断は?
A.DPP4阻害薬による類天疱瘡
炎症症状の少ない緊満性水疱であり、DPP4阻害薬による類天疱瘡を
まず考え、問診にて糖尿病に対してエクア(DPP4阻害薬)を3年前
から内服していることが判明しました。
皮膚生検では、好酸球浸潤を伴う表皮下水疱を認め、蛍光抗体直接法
では、表皮真皮境界部にIgG、C3の沈着を認めました。
蛍光抗体間接法では、split skinにて表皮側にIgGの沈着を認めました。
血液検査では、WBC6900(Eos 2.0%)、抗BP180抗体陰性、TARC 391
でした。
以上よりDPP4阻害薬による類天疱瘡の典型例と診断し、内科にDPP4
阻害薬の中止を依頼しました。
DPP4阻害薬による類天疱瘡の典型例では、自己抗体は、通常の
類天疱瘡のBP180NC16aに対する抗体ではなくBP180全長に対する
抗体であることが多く、そのため、抗BP180抗体は陰性または低値
となります。本症例でも抗BP180抗体は陰性であり、一方、蛍光抗体
間接法では表皮側にIgGの沈着を認めましたので、上記に一致する
所見でした。
DPP4阻害薬による類天疱瘡の多くは、薬剤の中止により軽快する
ことが多いですが、軽快せずに通常の類天疱瘡と同様の治療が必要
となることもあります。