患者さんから、薬をできるだけ多くほしい、と頼まれることがあります

が、1ヶ月に処方できる量に上限があるのをご存じでしょうか?

例えば、向精神薬や睡眠薬なんかは、薬の種類によって、14日が上限、

30日が上限、などがあります。発売されて1年経過していない新薬も

14日分が上限です。これらは、例外がないルールです。

しかし、それ以外にも上限があります。例えば、千葉県では、にきびの

外用薬のベピオゲルだと45g、デュアック配合ゲルだと30gなど。これは、

各製薬会社が、自治体の保険の審査委員に確認して安全量と判断できた

量となります。(安全量と判断できた量ですから、ひょっとしたら

もっと出しても大丈夫なのかもしれませんが、そこがよくわからないのが

実情なんです。)ここで問題となるのが、地域差です。千葉県では

年齢にもよりますが成人ではヒルドイドの上限は600g、東京都は

500gのようです。ですから、上述のベピオやデュアックも地域に

よってはもっと処方できることもあると思います。薬剤量に限らず、

例えば、東京都では第2世代の抗ヒスタミン薬の併用は認められています

が、千葉県では、診療所では、症状詳記を書こうが何だろうが確実に査定

されます。でも、総合病院や大学病院では認められていることもあるよう

です。

さらに問題となるのが、審査委員によっても変わる可能性があることです。

これまで返戻とならなかったレセプトが、ある時突然返戻となることが

あります。大概、審査委員が変わったときです。

つまり、レセプトの審査は、地域差のみならず審査委員の個人差、医療機関

の属性による差もあるわけです。

さて、それでは、上限を超えた量として、査定された薬剤の医療費

はどうなるのでしょうか?これは、処方薬の10割分だけでなく、調剤料

等も含めて、医療機関が返還しないといけない決まりになっています。

(実際は返還するのではなく、患者自己負担分以外の医療費の振り込み

額から差し引かれる。)

これは正直かなり痛いのがおわかりいただけますでしょうか?院外処方

なのに、薬の実費だけでなく調剤料まで・・・

こういう理由があるため、どうしても処方できる量に関しては、保守的

にならざるを得ない事情をご理解いただけますと幸いです。