こんにちは
院長の櫻井です
ときどき、咬傷で受診される方がいらっしゃいますが、咬傷は普通の外傷と同じように考えては
危険です。
(※ここで、咬傷には、犬・猫などの動物に咬まれた傷だけではなく、たとえば人と接触して歯が刺さって
できた傷も含みます。)
動物に限らず、人間も含めて、口腔内というのは非常に細菌が多く、したがって、咬傷の創部というの
は、一見きれいであっても、実際には細菌感染症を起こしやすい状態となっています。
そのため、咬傷は、縫合してしまうと、細菌を閉じ込めることになってしまうので、結果、
縫合創内に膿がたまって腫れてきて、また傷を開かなくてはならなくなってしまいます。
それゆえ、咬傷に関しては、重要臓器の露出などがない限りは原則的には縫合せずに開放創として
処理し、感染コントロールにつとめ上皮化をはかり、必要であれば二期的に瘢痕修正を行うのが、
治療方針となります。
先日当院に受診されたケースが非常に典型的でしたので、供覧します。
症例:15歳、男子。野球の試合でキャッチャーをしていて、ランナーと交錯しておとがい部にランナーの
歯があたり、3cm長の深い傷となった。他院で縫合したが翌日からパンパンに腫れてきたため
当院を初診した。
創部の糸と糸の間から膿が漏れでてくる状態であり、すぐに抜糸の上、創部を展開し、大量に排膿、
オキシフルで洗浄してみると・・・
歯のかけらが出てきました聞いてみると、衝突したランナーは歯が折れていたとのことでした。
念のため口腔外科にレントゲン撮影を依頼し、創内に他にも残存がないことを確認。抗菌剤内服+
イソジンシュガー処置を1週間継続したところ、感染徴候は消失したため、フィブラストスプレーによる
加療に変更し2週間後には上皮化しました。
傷跡は結構目立つ状態でしたので、少なくとも3ヶ月以上経過してからの瘢痕修正をする予定と
しました。
このように咬傷はかなり怖い経過をたどりますので、甘く見ずにすぐに適切な病院を受診される
ことをおすすめします。