こんにちは
院長の櫻井です
夏に増える小児の皮膚トラブルの代表格に「とびひ」(伝染性膿痂疹)があります。
~とびひとは?
あせも・虫刺され・湿疹などをひっかいたり、転んでできた傷に二次感染(黄色ブドウ球菌や溶連菌など)を起してできます。また、鼻の穴には様々な細菌が常在しているため、幼児で鼻をほじるくせがあると、その菌によりとびひが生じることもあります。
シャルムクリニックにもこの時期はとびひのお子さんが増えますが、他院で治療したけれども
よくならない、と受診される方もしばしばあり、その中で多いパターンが、とびひに対して
リンデロンVG軟膏を処方されているケースです。
断言しましょう。とびひに対してリンデロンVG軟膏は処方してはいけません。
なぜでしょうか?
とびひは、そもそもが感染症です。そのため、感染症に対する治療が基本スタンスとなります。
つまり、抗生剤内服+抗生剤外用が治療方針となります。その場合、外用剤はリンデロンVGで
いいのでしょうか?
最近の皮膚感染症起因菌の大半はゲンンタマイシン耐性菌であり、なおかつ、リンデロンVGに
含有されるゲンタマイシンは、ゲンタマイシン感受性菌に効果を発揮するよりも低濃度ですから、
起因菌がゲンタマイシン感受性菌であったとしても効果がなく、むしろ、感染症に対するステロイド
外用剤投与により、とびひを増悪させ得ます。もちろん、とびひに対してステロイド外用剤投与が
禁忌というわけではなく、湿疹続発性のとびひの場合は、同時に湿疹のコントロールが必要と
なりますから、その場合は、抗生剤外用剤とステロイド外用剤の重層塗布が効果的であり、
私も、この組み合わせの処方を推奨します。しかし、リンデロンVGは、とびひに対して、抗生剤
としての能力がほとんど期待できず、結果、ステロイド外用剤としての効果しか期待できないわけ
ですから、とびひを増悪させるのは当然と言えます。
リンデロンVGというのは、かなり中途半端な薬であり、それだからこそ、重宝されたりするのですが、
とびひに使ってはいけません。(いかなる疾患に対してもリンデロンVGは一切処方しない、という
皮膚科医もいますが、私は、そこまではまだ極論できず、ただし、とびひに対しては使用はしません。)