こんにちは
院長の櫻井です
昨日、日本レーザー医学会総会@大阪に参加してきました
そこで、以前から話題の「肝斑に対するQスイッチ・YAGレーザートーニング治療」の演題があったので、
聞いてきました。
この演題を発表する先生は大体いつも同じ先生なんですが、特にこれまでの発表と同じで、新しい知見
はなく、「週1回で計5回YAGレーザートーニングをハーフサイドテスト(顔の右半分だけ照射)で実施
したところ、最終照射1週間後では、左右に明らかな差があり、効果的だった」という報告でした、
が、その1ヶ月後の写真も供覧され、確かに照射した右側の方が、何もしていない左側よりも薄くは
なっているのですが、明らかに最終照射1週間目より濃くなっている、つまり、再発していました。
しかし、ここに関しては、「少し再発してますね」の一言でスルーされていました
おそらくあと数ヶ月もすれば、左右同じになっているでしょう。
そもそも肝斑は、メラニン産生能が亢進している状態であり、そこを改善しない限り、改善しない
はずです。メラニン産生能の亢進が改善されない限り、すぐ再発するのは、これまでの多くの
知見(通常のQスイッチ・レーザー治療や、IPL治療で、一旦改善したように見えたものが、
すぐ再発する、あるいは悪化する)でわかっています。
私は以前よりこの治療には懐疑的で、肝斑の患者さまには「絶対おすすめしません。その時の効果
しかなく、すぐ再発するし、かえって悪化することもあります。お金の無駄遣いです。肝斑は、
飲み薬、塗り薬、イオン導入を頑張ってやって、洗顔時にこすって刺激を与え過ぎないように
しましょう。」と指導してきました。
なぜなら、これまでこのトーニング治療を10回以上やったけどすぐ再発した、というケースや、かえって
悪化したというケースを何例も見てきましたし、何より、トーニング治療が肝斑のメラニン産生能の
亢進を改善するというデータが何一つとしてないからです。
座長で、レーザー治療の権威でもある、葛西健一郎先生も、その演題の直後に、
「Qスイッチ・YAGレーザートーニング治療は一般医はすべきではない。ひどく悪化する健康被害が
ものすごく多く、そもそも効果があるという根拠も何もなく、しかも他の治療で肝斑は改善するのに、
この治療をするのは、医者として倫理的にいかがなものか。この治療をするのならば、適切な施設で
治験として行うべきである。」
と断じていらっしゃいました。
全く同感です。
「新しい=正しい」では必ずしもないことを、今一度、肝に銘じるべきだと思います。
特にレーザー医療は、毎年のように新しい機械などが登場しますが、多くのものは小手先の変化
だけで、画期的なものというのは、実はそれほど多くありません。
情報過多なあまり振り回され過ぎぬよう、みなさまにおすすめいたします。