今日は、今までとうって変わって、超難問です。

症例:1歳、男児

現病歴:生下時より両手・両足の爪甲変形があり、小児科より当院紹介され本日初診。

現症:以下の写真に示すように、両手・両足の全爪甲が肥厚している↓

さて診断は?

A.先天性爪甲厚硬症(pachyonychia congenita)

ここまでは簡単ですね。

それでは、次に確認することは?

A.家族歴、他の部位(目・歯・毛・神経など)の症状の有無

魚鱗癬・掌蹠角化症などに代表される先天性の角化症の場合、いわゆる外胚葉形成不全症として、

目・歯・毛・耳・神経などの合併症を伴うことが多く、また遺伝性疾患も多く、本疾患についても

同様です。

本疾患は常染色体優性遺伝であり、

1型(Jadassohn&Lewandowsky type)→舌や頬粘膜の白色角化、四肢の角化性丘疹、掌蹠角化・多汗

                         を伴う、最も多いタイプ。K6a,K16遺伝子変異による。

2型(Jackson&Lawler型)→出生時に乳歯が見られる、思春期頃から多発性毛包嚢腫を生じる、舌の

                 白色角化は伴わない、掌蹠角化・多汗を伴うことがあるというタイプ。

                 K6b,K17遺伝子変異による。

3型(Schafer-Brunauer型)→1,2型の症状に加えて角膜混濁・白内障を伴うタイプ。

4型→3型の症状に加えて、嗄声、毛髪異常、知能障害を伴うタイプ。

5型→爪以外の異常を伴わないタイプ。

の5型に分類されます。

これまでのところ発達に異常はなく、健診でも指摘されていないようでした。

ただし、生下時に乳歯があったため、抜歯したエピソードがありました。

家族歴を聞いたところ、父親が同じ爪症状であるとのこと。

そこで父親に粉瘤などがないかを聞いたところ、たくさんできていて時々化膿している、とのことでした。

これでほぼ確定診断がつきました。

診断:先天性爪甲厚硬症(PC-2;Jackson&Lawler type)







実際の診療の場で、ここまでの詳しい診断は、よほどの先天性疾患の専門家でないと


即座には下せないと思います。


実際、私も、先天性爪甲厚硬症の診断はしましたが、そこから先は、爪疾患の専門書を


みながら、患児の母親に問診して、最終的な診断に至りました。


当院においては、このような稀な疾患に遭遇しても、すぐに、「あ、確かこれに書いてあったぞ」


と調べられるように、診察室に本を精選して置いてあります。(今回は、東先生の名著「爪」を


参照しながら問診し、また、このブログもそれに則って書いています。)


ですから、私自身は当院において診療する際にはできる限りの診断を下せるようにはして


います。しかし、もちろん、全ての内容が頭に入っていて、何も見ずに診断を下せるのが


求められるわけで、そういった意味で、自分はまだまだなんだなあ・・・と、痛感しました汗


(でも、これで今後は先天性爪甲厚硬症は、すぐに型診断もできるようになったはず、


というのが進歩ですね・・・あせる