こんにちは
院長の櫻井です
当院には施設入所中で褥瘡で受診される方が結構いらっしゃいます。
その時にどうしていくのか?
もちろん、局所処置は必須ですから、必要に応じて局所麻酔下にdebridementしながら、
軟膏処置や創傷被覆材による処置を実施しますが、それとともに大切なことは、褥瘡の起きた
原因に対する対処です。つまり除圧・体位交換のことですね。栄養状態不良であれば、そちらに
対する働きかけもsuggestionします。
しかし、最も大切なのは、ゴールが何であるか、ということではないでしょうか。
つまり、完治(この場合上皮化)させることが必ずしも必要ないのでは、ということです。
例えば、創面を清浄化して、入院して全身麻酔下に筋皮弁を用いて褥瘡を一旦治しても、
そこまでの処置を要する褥瘡を作ってしまったケースでは、大抵がまた同じ部位に褥瘡を
作ってしまう。つまり、全身状態・ADLや栄養状態に著しいと言えるほどの健常化がない限りは、
上皮化をゴールに置くのはナンセンスに近い、と思います。(逆に言えば、そこまでaggressiveな
治療を要するのは、若年成人でcoma blister後の重度褥瘡くらいではないでしょうか。)
とある本(夏井先生だったかな?)で、褥瘡を傷と捉えて治そうとするからいけないのであって、
老化現象の一つと考え褥瘡に対処すべき、という内容の文章を目にした時は、目からウロコ
でした。(ちなみに私はいわゆるラップ療法に対しては否定派です。)
つまり、褥瘡を、老化に伴って出てくる様々な症状(白内障や高血圧さらに言えば痴呆症など)と
同じくくりで考えて、治療に望む、ということです。そう考えれば、必ずしも完治が必須ではなく、
コントロールする、という発想が生まれてきます。すなわち、全身状態に悪影響を及ばさない
ように(感染源とならないように)創面をきれいな状態に保ちつつ、あわよくば上皮化すればよい、
と考えておいた方が現実的である、ということになります。