症例:60代、男性
既往歴:脳出血、糖尿病
現病歴:もともとアトピー性皮膚炎あり。1年前より顔・手背に
強い痒みを伴う苔癬化局面が出現。徐々に体幹・四肢にも痒みが
拡大してきた。顔にリンデロン、体にデルモベート外用するも
改善なく当院初診。
患者さんは塗装業の方で、エポキシ樹脂にかぶれてるのではないか、
とおっしゃりました。確かに、露出部にステロイド外用に抵抗性の
病変が存在することから、まず、ジャパニーズスタンダードアレルゲン
によるパッチテストを実施したところ、エポキシ樹脂に強陽性でした。
仕事柄、エポキシ樹脂の接触は回避できないとのことでした。
ここで、職業性手湿疹の診療ガイドライン(職業柄回避できない物質に
よる手湿疹の治療法として、光線療法やシクロスポリン等が記載)を
参考に、リンヴォックを開始しました。(投与前血液検査、胸部Xp実施
し、問題がないことはもちろん確認済。)
開始して2週間後に顔の皮疹は色素沈着を残し軽快、手背の皮疹は8割方
改善。
開始して1か月後には、顔の皮疹は再燃なく、手背の皮疹もわずかな紅斑
のみとなりました。
このように、原因を回避できない場合でも、改善する方法はある、という
いいケースだと思います。