今日は教訓的な症例。

症例:70代後半、男性

既往歴:前立腺肥大

現病歴:初診の前日にゴルフに行き、帰宅した際に右前腕に紫斑が

生じているのに気付いた。初診日起床時に右手背・右前腕に紫斑

が増えていたため、当院初診。

現症:写真に示す。右手背に1か所・右前腕屈側に2か所の径5cm大程度の

斑状の紫斑がある。

 

 

 

さて、診断は?

 

 

 

A.血小板減少症(本症例では白血病に起因)

 

 

 

一般的な老人性紫斑にしては、境界が不明瞭で、かつ、範囲も大きく色調

も鮮明でないのは、毛細血管の脆弱性に起因する老人性紫斑ではなく、

より深在性の紫斑であることを示唆します。また、老人性紫斑は軽度の打撲

などにより生じますが、前腕ですと通常は伸側に生じることが多く、屈側部

に認めることも、老人性紫斑以外の原因を考えさせます。(前腕伸側の方が

光老化しやすく、皮下脂肪も少なく、かつ、打撲しやすく、出血しやすい。)

この時点で、老人性紫斑以外を検討すべきとなります。

そのため、血算・凝固時間を含む血液検査を実施したところ、

 

WBC 26800/μl(Blast 79.0%,Pro-Myelo 3.0%,Myelo 1.0%,Seg 3.0%,Stab 0%,

Lympho 13.0%,Eos 0%,Baso 0%,Mono 1.0%),RBC 318万/μl(有核赤血球1),

Plt 4.4万/μl,PT-INR 1.06,APTT 27.6、肝腎機能に異常所見なし

 

でした。(パニック値のため翌診療日に検査会社から緊急FAXが届きまし

た。)(なお、前腕屈側深部に紫斑が生じたのは、ゴルフのグリップ・

スイングで同部に負荷が強くかかったためでしょう。)

即、血液内科を紹介しました。