今日は、かなり珍しい症例から。
症例:78歳、女性
既往歴:骨粗鬆症、高血圧
現病歴:数日前から左下腹部および右大腿部に痛がゆい発疹が出現してきたため、本日当院初診。
現症:
右大腿部~右臀部にかけてに痛がゆさのある小水疱が多発・集蔟している。
また、左下腹部~左下背部にかけて、痛がゆさのある浮腫性紅斑が多発・散在し、
一部に漿液性丘疹を伴う。
さて、診断は?
A.複発型帯状疱疹
衆知のごとく、帯状疱疹は片側の神経分節に沿って出現するのが典型であり、しかし時々
ウイルス血症を起こして汎発疹を呈することもあります。
本症例は、汎発疹ではなく、2ヶ所の異なる神経分節に生じたもので、いわゆる、複発型、と
いうべきものです。
右大腿部は見た瞬間に帯状疱疹の診断は容易ですが、その診断をした後に、左下腹部から
左下背部の症状を見た時に、自信を持って帯状疱疹の診断を下せるかが、本症例の
診断の肝でした。実際、私も、さあ、どうか、と一瞬悩みました(痛がゆい、という症状も曲者
で、毛虫皮膚炎や汗疹もありか?という考えも脳裏を横切りました。)が、ここで有用なのが、
ギムザ染色でした。
3枚目の写真の絆創膏を貼っている部分の浮腫性紅斑・漿液性丘疹からギムザ染色を実施し、
ウイルス感染多核巨細胞陽性でしたので、同部位も帯状疱疹と確定診断に至りました。
複発型帯状疱疹は非常に珍しく、文献的には全帯状疱疹において0.4%程度とのことです。
複発型帯状疱疹だからといって、immunocompromised hostであるというわけではなく、
本症例においても、全身状態は良好であり、糖尿病、悪性腫瘍の既往や免疫抑制剤の投与歴
などはありませんでした。ただし高齢でもあるので、腎機能に応じた抗ウイルス薬の投与量調整が
必要なため採血を実施し、その採血において、念のため簡単なスクリーニング検査をあわせて
実施しました。