皮膚病理組織診断を身につけるには、相当の努力が必要で、座学(教科書を読むこと)はもちろん
必須ですが、それだけで身につくほど甘くはありません。教科書を読んだだけでは、目の前の
プレパラートを顕微鏡でのぞいても、診断は出てきません。
私が東大勤務医時代に夏休みを利用して札幌皮膚病理診断科(当時は札幌皮膚病理研究所)で
研修させていただいた時にわかったのが、大切なのは、ひとつは、各疾患の診断根拠をきちんとマスター
しておくことで、これにより診断の再現性が得られるわけです。しかしこれは座学でもなんとかなります。
本当に大切なのは、プレパラートの見方、です。まずは肉眼でプレパラートを見る。これだけでも、
例えばHE染色で赤い組織(真皮)に紫色の組織があれば、真皮内の病変を疑うことができます。
そして顕微鏡で見る場合に、まず弱拡大で全体の構築を見て、さらに強拡大へと移っていく。
その際の、目の動き、というか、着目するポイントの見つけ方、が非常に大事です。これは座学では
絶対にわからない点で、プロフェッショナルと共に見ることによって、初めてわかるんですね。
先日も書いたように、皮膚科医の臨床診断能力の重要なファクターである、病理組織診断力、
これをブラッシュ・アップできる機会というのは、なかなかないんです。そのため、夏休みのような
まとまった時間が確保できるときに、このような研修を受けることは非常に有用であり、楽しみでも
あるんですね。